教育費ガイド

子どもに奨学金を借りさせる前に確認したい5つのこと【家計試算】

更新日:2026-05-21 / 大学1〜4年生 / 奨学金・大学費用・家計計画

結論:「借りるかどうか」より「いくら・どの種類・何年で返すか」を決めてから借りる

「奨学金を借りるべきか」という問いより重要なのは、「どの奨学金を・いくら・何年で返すかを事前に決めてから借りる」ことです。

奨学金は子どもの教育を可能にする重要な制度ですが、計画なしに借りると「就職後の手取りの3〜4割が返済に消える」という状況になりかねません。一方、計画的に使えばキャリア選択の幅が広がり、親の家計への負担も軽減できます。

この記事では、子どもが奨学金を借りる前に家庭で確認しておきたい5つのポイントを、具体的な試算とともに解説します。


奨学金の種類:まず全体像を理解する

日本の大学生向けの主な奨学金は3種類です。

一覧表

種別 運営 返済 特徴
給付型奨学金(修学支援新制度) 日本学生支援機構(JASSO) 不要 所得・成績要件あり。授業料減免と併給
第一種(貸与型・無利子) JASSO 必要(無利子) 成績・所得要件あり。利子負担ゼロ
第二種(貸与型・有利子) JASSO 必要(有利子) 要件が緩やか。月2〜12万円で選択可

給付型は返済不要ですが所得要件が厳しく、多くの中間所得世帯は対象外になります。第一種・第二種はどちらも将来の返済が伴う「借金」です。

月額の目安(第一種・大学・自宅外通学)

学校種別 自宅通学 自宅外通学
国立大学 4.5万円/月 5.1万円/月
私立大学 5.3万円/月 6.0万円/月

出典:日本学生支援機構「奨学金の種類と金額」(2025年度)


確認1:給付型奨学金(修学支援新制度)の対象になるかを先に確認する

最初に確認すべきは「そもそも返さなくてよい給付型の対象か」です。修学支援新制度の所得要件は次のとおりです。

所得要件の目安(4人世帯の場合)

区分 世帯年収の目安 給付月額(私立大・自宅外)
第I区分(非課税世帯等) 約270万円以下 月7.5万円
第II区分 約300〜380万円以下 月5万円
第III区分 約380〜600万円以下 月2.5万円
対象外 約600万円超 給付なし

出典:文部科学省「高等教育の修学支援新制度」(2025年)

年収600万円以下の世帯であれば、一部でも給付が受けられる可能性があります。「うちは対象外だろう」と決めつけず、JASSOの進学資金シミュレーターで事前確認することをおすすめします。

また、給付型奨学金の対象となる大学・学校の種別(学校の設置認定)も要件の一つです。入学前に志望校が対象かどうかを確認してください。


確認2:家庭から出せる金額を把握する

次に、「家庭から出せる金額」を明確にします。この数字を先に決めることで、奨学金でいくら補うべきかが決まります。

計算式

大学4年間の費用総額
 - 家庭から出せる金額(貯金+月々の仕送り)
 = 奨学金で補う金額

大学費用の目安(4年間)

進学先・居住形態 4年間合計の目安
国立大・自宅通学 約242万円
私立文系・自宅通学 約436万円
私立文系・一人暮らし 約730〜820万円
私立理系・一人暮らし 約880〜1,000万円

出典:文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」(2024年)をもとに算出。私立は平均値。生活費は月8〜12万円で試算。

家庭からの準備が300万円で私立文系・一人暮らしなら、不足分は430〜520万円です。この不足分を「4年間の奨学金で賄う」という計算になります。


確認3:月の返済額と将来の収入の関係を把握する

奨学金を借りる前に、「卒業後に毎月いくら返すことになるか」を具体的にイメージすることが重要です。

第二種(有利子)300万円借りた場合の返済シミュレーション

返済期間 月返済額(目安) 返済総額(元利合計)目安
10年返済 約3.1万円/月 約373万円
15年返済 約2.2万円/月 約396万円
20年返済 約1.8万円/月 約432万円

(利率0.405%/年の場合の概算。実際の利率は借入時の決定利率によります。出典:JASSO奨学金返還シミュレーター)

月3万円の返済は、手取り20万円の社会人には手取りの15%に相当します。毎月の生活費・家賃・社会保険料を引いた残額から返済するため、「実感より苦しい」と感じる場合が多いです。

「月3万円×10年=360万円」の現実感チェックリスト

  • 就職予定の業界・職種の初任給はいくらか(厚生労働省の賃金構造基本統計調査で確認できます)
  • 手取り収入(総支給×約80%)から毎月の固定費(家賃・光熱費・食費)を引いた残額はいくらか
  • 返済が続く10〜20年の間に結婚・出産・住宅購入等のライフイベントが重なるか

子どもと一緒にこの試算をしておくことで、「借りた後の生活」をイメージできます。


確認4:私立 vs 国立の選択が奨学金額に直結することを認識する

進路選択の段階で、「国立か私立か」の違いが奨学金の必要額に大きく影響します。

自宅通学の場合:4年間の費用差

進学先 4年間合計 差額(国立比較)
国立大学 約242万円
私立文系 約436万円 +194万円
私立理系 約567万円 +325万円

出典:文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」(2024年)、初年度費用(授業料+入学金)および2〜4年次授業料をもとに算出

私立を選んだ場合、国立比較で200〜330万円多く費用がかかります。この差額をほぼそのまま奨学金で補う形になることを、進路相談の時点で子どもと共有しておくことが大切です。

「どうしても私立のこの学校に行きたい」という意思決定は尊重すべきですが、「その分、卒業後に自分がいくら返すことになるか」も一緒に理解したうえでの選択であることが理想です。


確認5:借りた後の家計シミュレーションをしておく

最後に「借りた後の家計」を可視化します。特に確認すべきは、子どもが就職後の手取りに対する返済比率です。

返済比率の目安

手取り月収 月3万円返済の比率 月2万円返済の比率
18万円(初任給水準) 16.7% 11.1%
22万円 13.6% 9.1%
25万円 12.0% 8.0%

一般的に、ローン返済比率は手取りの10〜15%以内が望ましいとされます。月3万円の返済は、初任給水準では上限に近く、想定より生活が苦しくなるリスクがあります。

返済比率を下げる3つの対策

  1. 借りる金額を少なくする(必要最低限を見極める)

    • 国立と私立で実際にかかる費用差を計算し、国立を選ぶことで借入額を抑える
    • 一人暮らしではなく自宅通学が可能か検討する
  2. 第一種(無利子)を優先的に活用する

    • 利子がない分、同じ金額でも返済総額が少なくなる
    • 成績要件や所得要件を事前に確認する
  3. 給付型と貸与型を組み合わせる

    • 修学支援新制度の給付型が一部対象の場合、給付額を充てて貸与額を減らすことが可能

「奨学金=悪」ではない:計画的に使えばキャリア選択の幅が広がる

奨学金に対してネガティブなイメージを持つ方もいますが、正確には「計画なしに借りると生活を圧迫する」のであって、計画的に活用すれば有効な制度です。

  • 志望する大学・学部に進学できることで、なりたい職業に就ける可能性が高まる
  • 奨学金返済を見込んだうえで収入水準の高い職種・業界を目標にする動機になる
  • 親の家計への過度な依存を避け、子ども自身が学費の一部を負担する自立心につながる

重要なのは「借りることを恥ずかしがらない」でも「なんとなく借りる」でもなく、**「返済計画を立ててから借りる」**という意識です。


よくある Q&A

Q. 第一種と第二種は同時に借りられますか?

A. はい、併用できます。第一種(無利子)で借りられる上限額を優先的に活用し、不足分を第二種で補う方法が一般的です。ただし借入総額が増えると返済負担も増えるため、必要最小限の金額にとどめることをおすすめします。

Q. 在学中に経済状況が変わった場合、奨学金の種類や金額を変えられますか?

A. 一定の条件のもと、増額・減額・種別変更の申請が可能です。また、家計急変(失業・死別等)の場合は緊急採用制度もあります。在学中の変更は大学の学生支援窓口を通じて手続きします。

Q. 返済が困難になった場合の救済制度はありますか?

A. JASSOには「返還期限猶予制度」(最長10年間)と「減額返還制度」(月々の返済額を減らす)があります。また、収入に応じて返済額が変わる「所得連動返還型返還制度」(第一種の一部)も選択できます。返済開始後に困ったら早めにJASSOに相談することが重要です。

Q. 奨学金の返済は就職先の選択に影響しますか?

A. 返済義務がある以上、ある程度の収入が確保できる職場を選ぶ必要があります。ただし「奨学金があるから安定した大企業しか選べない」と過度に縛られる必要もありません。返済比率を手取りの15%以内に収める範囲であれば、多様なキャリア選択が可能です。


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